採用サイトのつくり方
採用サイトを制作会社に外注する前に、社内で固めておく3つのこと
この記事を書いた人ハグリこの記事でわかること
- 誰が何を決めるかを、ステークホルダーマップで整理する方法
- 採用の「問題」「課題」「解決策」を分けて考える方法
- 制作会社への問い合わせ前にまとめる、問題・制約・ゴールイメージ
「採用サイト、そろそろリニューアルしたいよね」。社内でこの話が出ると、まずデザイン会社への問い合わせを考えることがあります。良さそうな制作会社を3社ほど選び、相見積もりを取って提案を比べる。そんな進め方です。
私たち株式会社caroa(カロア)は、「事業成長のための資産をデザインする」をコンセプトに、企業のみなさんと採用サイト・コーポレートサイトのリニューアルを手がけてきたデザインパートナー会社です。
クライアントとご一緒するなかで、よく感じることがあります。Webサイト制作の成否は、制作会社に問い合わせる前に、もう半分決まっていることがあるんです。社内で「3つのこと」が固まらないまま発注すると、ほぼ確実にどこかで手戻りが起きます。デザインの方向性が二転三転する。社内の上層部から、急に「やっぱりこっちにしてほしい」と言われる。納期もずるずる後ろに延びてしまう。
しかも、こうした手戻りは制作会社の力量とは関係なく起きることがあります。発注側の社内で方針が固まっていないためです。
本記事では、カロアが現場で見てきた事例を交えながら、採用サイトを外注する前に社内で固めておきたい3つのことを整理します。
なぜ「社内」を先に固めるのか
Web制作の世界には、「制作会社にお任せします」という発注スタイルが昔からあります。一見すると楽そうに聞こえます。プロに任せれば、いい感じに仕上げてくれそうな気もする。
ですが、現実はそうならなかったりします。
たとえば採用サイトを作るプロジェクトには、想像以上に多くの人が関わります。発注側だけでも、人事・広報・経営層・現場社員。制作会社側には、PM・ディレクター・デザイナー・エンジニア・コピーライター・カメラマンなどがいます。
同じ会社のメンバーでも、考え方が大きく違うことがあります。これだけの人数で1つの方向に進もうとすれば、調整が難しくなるのは当然です。コーポレートサイトやサービスサイトの制作でも、この点は変わりません。
このとき、制作会社側のチームをいくら調整しても、解決しないことがあります。問題はたいてい、発注側の社内で起きています。
制作会社のディレクターから「これでいいですか?」と確認が来ても、社内の誰がOKを出せるのかが曖昧です。やっと担当者が「いいです」と返したあとで、上司が「いや、これは違う」と言う。さらに役員からは、別の方向性の意見が出てくる。
カロアではこれを「コラボレーション以前の問題」と呼んでいます。制作会社と協働を始める前から、発注側の社内で認識がずれていれば、どれだけ優秀なデザインチームと組んでもプロジェクトは進みません。
株式会社caroaの代表・葉栗雄貴は、著書『Web制作のための、発注&パートナーシップ構築ガイド』(BNN、2025)でもこの点を書いています。発注者と制作会社のパートナーシップは、契約を結ぶ前に、社内で協働の土台を作るところから始まることもあるんです。
採用サイトリニューアルで実際に起きること
カロアが過去にご一緒したプロジェクトで、こんな展開になったケースがありました。
最初の打ち合わせでは、人事担当の方から「とにかく応募者を増やしたい」という要望をいただいていました。カロアはそれを軸に、ターゲット設計とコンテンツ設計を進めていきます。ところが、デザイン案が形になってきた段階で、社長から「うちが今ほしいのは応募の数じゃない、質だ」という意見が入りました。それまで進めていた方向性は、応募の母数を増やす設計。質を高める設計とは、ほとんど真逆と言っていい内容でした。
結局、ターゲット設計から作り直しになります。スケジュールは1ヶ月以上後ろ倒しになり、追加費用も発生する形になりました。
このとき、社長は何も悪くないんですよね。経営者として「採用の質」を最優先にするのは当然の判断。問題は、その判断軸がプロジェクトを始める前に社内で共有されていなかったことにありました。
採用サイトを外注すれば、社外の人と一緒にプロジェクトを進めることになります。始めてから方向性を決めようとすると、必ずどこかで作業が止まります。だから、外注する前に社内で方向性を固めるんです。
1つ目|ステークホルダーマップで「誰が何を決めるか」を見える化する
最初に固めるべきは、「このプロジェクトに、誰が、どんな関心と権限で関わるのか」を可視化することです。カロアではこれを「ステークホルダーマップ」と呼んでいます。
地味な作業に見えるかもしれません。ですが、ここをサボると、後の工程のあらゆる場面で、時間を取られることがあります。「誰の確認を取れば次に進めるんだっけ?」「これって役員にも見せた方がいいんだっけ?」と毎回手が止まる、あれです。
ステップ1:メンバーをリストアップする
まずは、プロジェクトに関わりそうな人を全員、ヌケモレなくリストアップします。最初はこれだけで十分。シンプルに表にしていきます。
名前 | 部署 | 本プロジェクトでの役割 |
|---|---|---|
山田太郎 | 人事 | プロジェクト担当者 |
石川たつみ | 人事/部長 | 意思決定 |
原 秀樹 | マーケティング/部長 | コメント・オブザーバー |
田中美紀 | 代表取締役 | 最終決裁 |
注意点は1つです。「この人は関係ないかも」と思った人ほど、いったん入れておくと安心なことがあります。あとで外す方が、あとで足すよりずっと楽です。
特に、リニューアルや新規制作のような大きなプロジェクトでは、思いがけない人から横やりが入りがち。広報・IR・法務・情シス。社内の発信物に関心を持つ部署は、意外と多いこともあります。
ステップ2:権力 × 関心度の4象限で配置する
リストができたら、次は「権力」と「関心度」の2軸で配置します。4象限のマップです。
関心度 → | 低い | 高い |
|---|---|---|
権力 大 | 満足な状態を保つ | 注意深くマネジメントする |
権力 小 | 監視する(最小限の工数で) | 常に情報を伝える |
- 権力 大 × 関心度 高い(右上):プロジェクトの中核。意思決定の場には必ず巻き込む
- 権力 大 × 関心度 低い(左上):権限はあるが、自ら関与してこない人。たとえば社長で、採用には興味があっても採用サイトには口を出さないタイプ。何もしないと、最後の最後に意見をひっくり返されることがあるため、注意が必要です
- 権力 小 × 関心度 高い(右下):現場社員や中堅メンバー。意見を言いたい人が多い。情報を定期的に共有して、納得してもらえるようにする
- 権力 小 × 関心度 低い(左下):基本的に、特別な対応は不要。ただし変化があれば配置を見直す
このマッピングで一番大事なのは「4象限のうち、どこに誰がいるかを言語化する」こと。「課長と主任のどっちが関心度高いんだっけ?」みたいな相対比較で迷うケースが現場では多いんですが、ここはあまり厳密に考えなくて大丈夫です。仮で置いてみて、間違っていたら直す。それくらいの軽さで構いません。
よくある失敗
ステークホルダーマップを作るときに、一番多い失敗は「担当者だけで作ってしまう」ことです。担当者が把握している範囲だけで作ると、社長や役員の動きを見落とすことがあります。
カロアからのお勧めは、作ったマップを上司にも一度見せてフィードバックをもらうこと。10分で終わる確認ですが、抜けていたキーパーソンが見つかる確率はかなり高いんですよね。
2つ目|「問題」と「課題」を区別する
社内体制が見えたら、次は「何のために採用サイトを作るのか」を言語化していきます。
ここで多くの会社がつまずくのが、「問題」と「課題」の混同です。似た言葉に見えますが、Webデザインでは区別して使うことがあります。
用語 | 意味 | 採用領域での例 |
|---|---|---|
問題 | 解決すべき事象/状況 | 採用応募者の質が下がっている |
課題 | 問題の解決アプローチ | ターゲット層への認知度を上げる |
解決策 | 課題を解くための具体施策 | 採用サイトをリニューアルする/採用ピッチを作る/SNS運用を始める |
この3つの関係で考えると、採用サイトのリニューアルが最初から答えとは限りません。課題に対する解決策の一候補にすぎないこともあります。
「問題 = 採用サイトが古い」は問題ではない
社内で議論を始めると、最初に出てくるのは「採用サイトのデザインが古いから刷新したい」「スマホ対応ができていない」みたいな話だったりします。
これらは現状の症状であって、解決すべき問題そのものではないんですよね。一段掘り下げる必要があります。
サイトが古い → だから何が困っているのか? → 応募者の数は減っていない。でも、ミスマッチが増えている。 → だから採用後の早期離職率が上がっている。 → これが本当の「問題」。
ここまで掘り下げて初めて、「ではこの問題を解くための課題は何か?」「採用サイトのリニューアルは、その課題の解決につながるのか?」という議論ができるようになります。
採用サイトが解決策にならないこともある
正直、社内で問題を掘り下げてみたら「採用サイトのリニューアルは今やるべきことではない」という結論になることもあります。
たとえば、応募の母数が足りていないのに、サイトのデザインを刷新しても、たぶん効果は限定的です。母数の問題は、媒体・広告・リファラルなど、認知を広げる施策で解決した方が早いこともあります。
採用サイトの本領が発揮されるのは、「認知された後、応募を決断するかどうかの分岐点」です。応募検討中の人が最終的に「ここで働きたい」と思える情報設計がなければ、サイトをいくら綺麗にしても、応募の質は上がらないんですよね。
そのため、問題と課題を整理するときには、「採用サイトを作らないという結論も受け入れる覚悟」が必要なこともあります。社内で時間を使って整理した結果、別の解決策が最適なら、そっちに動いた方がいい。これを「決めてから整理する」のではなく、「整理した結果として決まる」順番で進めることが、外注する前に社内でやる意味でもあります。
この作業を社内だけでやるのは難しい
正直に言うと、社内のメンバーだけで問題と課題を整理するのは、難しいことがあります。
「自社のことは自社が一番よく分かっている」のは事実なんですが、よく分かっているからこそ、今の考え方から離れられないことがよくあります。「採用サイトを作る」が前提になっていると、その前提を疑うこと自体が難しくなる。
カロアの現場感覚で言うと、ここはデザインパートナーと一緒に整理する選択肢もあります。社外の視点を入れることで、課題の輪郭がはっきりしてくる。「課題設定からパートナーと一緒に進めたい」と問い合わせ時に伝えるだけで、提案の質はかなり変わります。
社内での整理に行き詰まっているなら、今の状況からお聞かせください。カロアに課題の整理から相談する。
3つ目|要件は「3つだけ」整理する
問題と課題が見えたら、最後にやるのは「問い合わせ用の要件」を整理することです。
ここで多くの会社がやりがちなのが、「要件定義書(RFP)」と呼ばれる、20〜30項目以上のぶ厚い資料を社内で作り込むこと。カロアからは、これをお勧めしていません。
理由は2つあります。
1つ目は、社内だけで完璧な要件を作るのは難しいからです。Web制作の経験が豊富でないかぎり、要件には不完全な部分が残ります。完璧にしようとすると、社内調整に2〜3ヶ月かかってしまうこともあります。
2つ目は、要件を細かく決めすぎると、制作会社の専門性を活かせないからです。すでに決まりきった要件を渡されたら、デザイン会社は「指示通りに作る」以外にできることがなくなる。これでは、外部のプロに参加してもらう意味が薄れることがあります。
そのため、問い合わせ前に整理する要件は、3つだけで十分なこともあります。
1)解決したい問題
何のために採用サイトを作りたいのか。1つ前の章で整理した「問題」をそのまま書きます。
例:採用後の早期離職率が高く、ミスマッチが課題。応募の段階で「会社のリアルな姿」を伝えきれていないことが原因と考えている。
2)決まっている制約
予算とスケジュール。決まっている範囲で書きます。確定していない場合は「概ねこれくらい」のレンジで構いません。
例:予算は200〜400万円のレンジで検討中。納期は次の新卒採用シーズン前を希望。具体的な公開時期は相談したい。
3)ゴールイメージ
どんな状態を目指したいのか。参考になりそうなサイトや方向性のイメージがあれば、それも添えます。完成形まで決める必要はありません。「こんな感じが近いかも」のレベルで十分。
例:堅すぎず、フランクすぎない、誠実な印象のサイト。「○○社のサイトの方向性に近い」「動画でリアルな職場の様子が伝わるとよい」など。
なぜ「決めすぎない」方がいいのか
要件を不完全な状態で出すことに、抵抗がある人もいるかもしれません。「ちゃんとしないと相手に失礼じゃないか」「準備不足と思われそう」と。
ですが実際には、制作会社側も、不完全な要件の方がありがたいと感じることがあります。完璧に決まりきった要件を渡されると、提案の幅が狭くなる。逆に、まだ決まっていない部分があれば、制作会社の知見を反映した提案ができることもあります。
カロアの感覚では、「完璧な要件 + 1ヶ月後に問い合わせ」よりも「不完全な要件 + 来週問い合わせ」のほうが、最終的にいいプロジェクトになるケースが圧倒的に多いと感じることがあります。社内で考え込んでいる時間より、デザインパートナーとコラボレーションしている時間のほうが価値があるんですよね。
3つを固めてから、相談先を探す
ステークホルダーマップ・問題と課題の区別・3つだけの要件。この3つが固まったときが、ようやく制作会社への相談を始めるタイミングになることもあります。
ここまでくると、デザイン会社への問い合わせが格段に楽になります。何を聞かれても、社内の誰に確認すべきか、何が決まっていて何が決まっていないかが、自分のなかで明確になっているからです。
複数のデザイン会社に問い合わせて、提案を比較するときも、同じ3つの軸で評価できるようになります。「この会社は問題の捉え方がうちと合っている」「あの会社は要件の余白を活かす提案をくれた」と、判断基準がはっきりします。
デザインパートナーの選び方や、契約後のプロジェクトの進め方は、別の記事で詳しく書く予定です。
ひとまず、外に出る前にやることはこれで終わり。
どれくらい時間をかければ、現実的に動き出せるか
ここまで読んで、「3つ固めるのに、結局どれくらい時間がかかるんだろう?」と気になる方もいるかもしれません。
カロアの現場感覚では、2〜3週間が現実的な目安になることもあります。
ステークホルダーマップは、最初の1日で下書きを作り、上司に確認してもらいながら1週間で仕上げるイメージです。問題と課題は、関係者が集まる1〜2回の議論で大枠を整理します。要件は、その内容を1ページにまとめれば終わります。
もちろん、組織の規模や合意形成のスタイルによって幅はあります。役員会の決裁が必要な場合は、もう少し時間がかかることもあります。ただ、3ヶ月以上かかっているなら、それは「整理」ではなく「先送り」になっている可能性が高いこともあるんですよね。
完璧な要件を作ることよりも、不完全でも前に進む方が、結果的にいい採用サイトに辿り着くことが多いこともあります。
社内で方針を固めるのは、外注の準備というより、プロジェクトを成功させるための準備です。時間が短すぎれば準備が足りず、長すぎれば進める勢いがなくなります。それぞれの会社に合う準備期間を見つけられたらと思います。
外注前に確認しておきたい3つのこと
採用サイトを外注する前に、次の3つを社内で固めておきましょう。
- ステークホルダーマップで「誰が何を決めるか」を見える化する
- 問題と課題を区別して、本当に解くべき事象を言語化する
- 要件は3つだけ(解決したい問題 / 制約 / ゴールイメージ)整理する
採用サイトの準備、どこから始めるか迷ったら
「誰を巻き込むべきか」「何を解決したいのか」「どこまで要件を決めるべきか」。社内で話してみても、答えがまとまらないことはあります。
カロアでは、採用課題の整理からサイトの設計・制作までご一緒しています。要件が固まっていなくても、今困っていることや、決まっている予算・時期からお聞かせください。
支援内容を先に知りたい方は、カロアの採用サイト制作を見る。